発達障害者が考えられる就活あれこれ

1. A型事業所(就労継続支援A型)

  • A型事業所(就労継続支援A型)の概要

A型事業所(就労継続支援A型)は雇用契約を結んで働きながら、一般企業への就職を目指してスキルを身につけていく障害福祉サービスです。おもに、軽度から中程度の障害を持つ方が、就労に必要な知識や技能を習得し、自立した生活を目指して支援を受けられる場所です。パソコン事務や清掃、検品、製菓や製パンなどのお仕事があります。

  • A型事業所(就労継続支援A型)で働くメリット

安定した収入と雇用条件となる: 法定最低賃金を保障されており、雇用契約に基づいて働けるため、安定した収入と雇用条件が得られます。

丁寧な指導・支援が受けられる: 個々の障害や特性に合わせた丁寧なサポートを受けられるため、安心して働けます。

周囲の理解がある: 障害を持つ利用者同士で助け合ったり、スタッフから個別の指導を受けたりすることができます。

社会との関わりを持つことができる: 仕事を通して、社会との関わりを持ち、コミュニケーション能力を向上させることができます。

  • A型事業所(就労継続支援A型)で働くデメリット

収入が比較的低い: 最低賃金が保証されているものの、一般企業に比べて賃金が低い傾向があります。

利用料金がかかる場合がある: 世帯所得によっては、毎月利用料金がかかります。

年齢制限がある:原則18~65歳未満の方が対象となっています。

書類選考や面接がある:雇用契約となるため、すぐに通えるというわけではありません。

一般企業への移行率は事業所による:一般企業への移行の支援が手厚いところもあれば、現状維持を目指す事業所もあります。

  • A型事業所(就労継続支援A型)に向いている人

★定収入でも安定した賃金を得たい人

★無理のない働き方で仕事にチャレンジしたい人

★将来的に一般企業への就職を目指したい人

A型事業所(就労継続支援A型)を選ぶ際のポイント

(1)自分の興味や関心に合った事業所を選ぶ

(2)事業所の雰囲気や指導員との相性を見極める

(3)将来的に一般企業への移行を目指す場合は、事前に移行率などの情報収集をおこなう

⇒実際にA型事業所(就労継続支援A型)を利用するなら、さらに詳しく!

2. B型事業所(就労継続支援B型)

  • B型事業所(就労継続支援B型)の概要

B型事業所(就労継続支援B型)は、雇用契約を結ばずに働ける障害福祉サービスです。おもに、中程度から重度の障害を持つ方が、自分のペースで作業をおこない「工賃」を受けたりスキルを習得できたりします。仕事内容は製菓や封入作業、手芸などが多くあります。

  • B型事業所(就労継続支援B型)で働くメリット

A型事業所よりも丁寧な支援: B型事業所は、A型事業所よりも個々の障害や特性に合わせた丁寧な支援を受けられることが多いため、安心して働けます。

働きやすいペース: 週1日だけ、1日3時間だけ、など無理のないペースで働くことができます。

地域活動への参加: 地域活動への参加を通して、社会との接点を持ち、社会性を高めることができます。

  • B型事業所(就労継続支援B型)で働くデメリット

収入が不安定:雇用契約ではないため最低賃金がなく、工賃そのものが安くなります。障害年金や生活保護との併用も視野に入ってきます。

利用料金がかかる場合がある: 世帯所得によっては、毎月利用料金がかかります。

  • B型事業所(就労継続支援B型)に向いている人

★自分のペースでゆっくりと働くスキルを習得していきたい人

★周囲の理解とサポートを受けながら働きたい人

★社会とのつながりを持ちたい人

B型事業所(就労継続支援B型)を選ぶ際のポイント

(1)自分の障害や特性に合った仕事ができる事業所を選ぶ

(2)業内容や職場環境をよく確認する

(3)世帯所得や利用料金を事前に確認する

⇒実際にB型事業所(就労継続支援B型)を利用するなら、さらに詳しく!

3. 一般企業の障害者雇用枠

  • 障害者雇用枠の概要

一般企業の障害者雇用枠は、発達障害者や知的障害者などの障害者に対して、法定雇用率に基づいて雇用枠を設けている制度です。一般企業で働くことができるため、A型事業所やB型事業所よりも高い賃金を得ることができます。

  • 障害者雇用枠で働くメリット

A型事業所やB型事業所よりも賃金が高い: 一般企業で働くことができるため、A型事業所やB型事業所よりも高い賃金を得ることができます。

キャリアアップを目指せる: 一般企業で働くことができるため、キャリアアップを目指すことができます。

社会的なステータス・社会貢献を感じられる: 一般企業で働くことができるため、社会的なステータスを得ることができます。

  • 障害者雇用枠で働くデメリット

競争率が高い: 法定雇用率に基づいて雇用枠が設けられているため、競争率が高くなります。

周囲の理解とサポートが必ずしも得られるわけではない: 一般企業では、必ずしも周囲の理解とサポートが得られるわけではありません。

社会的な偏見や差別がある: 一般企業では、社会的な偏見や差別がある場合があります。

一般社員とのコミュニケーション: 一般社員とのコミュニケーションが苦手だと、孤立してしまう可能性があります。

面接や仕事の難易度があがる: A型・B型事業所よりも、面接自体や、仕事の難易度が高い場合があります。

  • 障害者雇用枠に向いている人

★より高い賃金を得たい人

★キャリアアップを目指したい人

★社会的ステータスを得てしっかり自立したい人

一般企業の障害者雇用枠を選ぶ際のポイント

(1)自分の強みやスキルを活かせる企業を選ぶ

(2)企業説明会やインターンシップに参加して、企業の雰囲気や風土を確認する

(3)面接では、自分の特性を正直に伝える

4. 一般雇用枠でオープン就労

  • オープン就労の概要

オープン就労は、一般向けの就職情報サイトやイベントなどを利用しながら、障害を開示して就職活動をおこなう方法です。障害者枠以外に、障害を理解している企業の一般雇用枠も対象となります。

  • オープン就労のメリット

理解のある企業との相性が良い: 障害者雇用制度に積極的な企業や、発達障害者への理解が深い企業を見つけることで、安心して働けます。

選考過程で配慮を受けられる: 面接や筆記試験など、選考過程において配慮を受けられる可能性があります。

入社後もサポートを受けられる: 入社後も、職場での適応やキャリア形成などにおいて、サポートを受けられる可能性があります。

  • オープン就労のデメリット

求人情報が少ない: 一般の求人情報に比べて、求人情報が少ないというデメリットがあります。

面接率や採用率が低い: オープンにすることで、面接に通らなかったり、採用してもらえないこともあり得ます。

  • オープン就労に向いている人

★自分の能力や経験を活かして、一般的な働き方をしたい人

★社会的な支援や合理的配慮を受けながら働きたい人

★周囲の理解やサポートを得ながら頑張っていきたい人

オープン就労を選ぶ際のポイント

(1)企業の理念や事業内容、障害者雇用制度などをしっかりと調べて、自分に合った企業を見つける

(2)障害者向けの就職イベントやセミナーなどに積極的に参加し、情報収集をする

(3)一般の就職活動よりも早期に準備を始める

(4)面接では、自分の強みや経験をアピールするとともに、どのように活かせるかを具体的に説明する

(5)合理的配慮が必要な場合など、時には事前に企業に伝えることも念頭に入れておく

5. クローズ就労

  •  クローズ就労の概要

クローズ就労は、障害を開示せずに一般企業の採用活動に参加する方法です。履歴書や職務経歴書に障害のことを記載せず、自分の能力や経験をアピールして就職活動をおこないます。いわゆる一般的な“就活”です。

  •  クローズ就労のメリット

幅広い企業に応募できる: 障害者枠に限定されず、自分が興味を持った企業なら幅広く応募できます。

自分の能力や経験を活かせる: 障害や特性を気にせず、自分の能力や経験を活かせる仕事でやりがいを感じられます。

社会的な偏見や差別を受けにくい: 障害者枠で就職する場合よりも、社会的な偏見や差別を受けにくい環境で働けます。

  •  クローズ就労のデメリット

競争率が高い: 障害者枠よりも、さらに競争率が高くなります。

周囲の理解とサポートが得づらい: 障害のことをオープンにしていないため、周囲の理解とサポートが必ずしも得られるわけではありません。

そもそも発達障害について理解していない企業もある: 障害・特性への理解が深くない企業もあるため、配慮を受けにくい環境で働く可能性があります。むしろ「できない」ことに怒られることもあるかもしれません。

  •  クローズ就労に向いている人

★自分の能力や経験を活かして、競争の中で働きたい人

★社会的な偏見や差別を受けずに、働きたい人

★周囲の理解やサポートを得られなくても、自力で頑張れる人

クローズ就労を選ぶ際のポイント

(1)クローズ就労は、幅広い企業に応募できる点が大きなメリット

(2)競争率が高いため、しっかりと準備をする

(3)また周囲の理解とサポートを得られるように、必要に応じて障害特性を説明することも頭に入れておく

※補足

就活の際に障害や特性をオープンにするかどうかは自由です。

障害特性をオープンにするかどうかは、自分の性格や企業選び、職種選びなどを考慮して決めましょう。

就活で成功するためには、自分の強みや弱みを理解し、それを活かせる仕事を見つけることが大切です。

6. フリーランス

  • フリーランスの概要

フリーランスや独立は、会社に雇われるのではなく、自分自身で仕事をする働き方です。スキルや資金さえあれば、自分のペースで働いたり、好きな仕事を選んだりすることができます。

  • フリーランスで働くメリット

自分のペースで働ける: 会社に雇われる時間帯や場所などに縛られないため、自分の好きなように働けます。

好きな仕事を選べる: 自分が興味のある仕事や、得意な仕事を選べます。

高い収入を得られることも多い: 自分で金額を決めるので、能力や経験次第では高い収入を得られます。

  • フリーランスで働くデメリット

収入が不安定になりやすい: 継続的に仕事や依頼がなければ、そのまま収入が減ります。

社会保険や厚生年金に加入できない: 会社員のように社会保険に加入できないため、自分で加入する必要があります。

自分ですべてを管理する必要がある: 仕事の獲得から営業活動、スケジュール管理、納品まで、すべてを一人で管理する必要があります。ただ、お金を払えば税理士などプロに任せることはできます。

  • フリーランスに向いている人

★会社に縛られず、自分のペースで働きたい人

★好きな仕事を選んで働きたい人

★リスクを承知で、自分で責任を持って仕事に取り組める人

フリーランスや独立を選ぶ際のポイント

(1)自分のスキルや経験を活かせる仕事を選ぶ

(2)フリーランスや独立する前に、ビジネスプランをしっかり立てる

(3)他のフリーランスで活躍している方や起業家とネットワークを築く

まとめ

発達障害者にとって、就職活動は大きな不安と壁となることが多くあります。しかし、自分に合った働き方を見つけることは可能です。

就労継続支援、障害者雇用、オープン就労、クローズ就労、フリーランスと、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、焦らずしっかりと準備をして、就職活動に取り組みましょう。

発達障害それぞれのわかりやすい説明と、就職を考えるうえでの困りごと

1. ASDの場合

正式名称: 自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)

ASDは、脳の機能が少しだけ異なるために、人とコミュニケーションや社会的なやり取りが苦手な障害です。具体的には、次のような特徴が見られます。

  • コミュニケーションの苦手さ: 相手の気持ちや意図を理解するのが苦手。会話がうまく続かなかったり、冗談や皮肉を理解できなかったりする。
  • こだわり: 興味のあることに強くこだわる。興味のないことには無関心だったり、決まったやり方に固執したりする。
  • 想像力の欠如: 場面に合わせて行動を変えたり、物事を別の視点から考えたりすることが難しい。
  • 感覚過敏: 音や光、匂いなどに対して過敏に反応し、不快感を感じたり、集中力を妨げられたりする。
  • 感覚鈍麻: 音や光、匂い、触覚などに対して鈍感。細かい作業が苦手。
  • 運動機能:紐を結びにくい、ボタンをかけづらいなどの不器用さ(運動機能障害)を持っている場合も多くあります。

就職を考えるうえでの困りごと

  • コミュニケーション: 学校や支援センターなどに自分で働きかけづらい。面接での自己PRが苦手。誤解が生じやすかったり、黙ってしまうことがある。複数人面接などで発言しづらい。
  • こだわり: 決められた手順やルールを守るのが苦手。自分が得意なこととやりたいことが乖離している場合、採用条件などを度外視してしまう。
  • 変化への適応: 応募から面接へ、先が読めないまま進むことがストレスとなる。また、電車で知らない場所に行ったり、苦手な音が多い場所に行かなくてはいけなかったりして、食欲がなくなったり、逆に食べすぎたり、薬の飲み忘れで体調が悪くなることも。

実際の職場で起こりうる困りごと

  • コミュニケーション: 上司からのFB内容の理解がしづらい。職場の同僚とのコミュニケーションが苦手で、時には孤立してしまうことがある。チームワークが必要な仕事が難しい。昇給や評価がかかっている面談での自己PRが不得意。
  • こだわり: 決められた手順やルールを守るのが苦手、あるいはあいまいな指示が許せなくなりがち。職場独自のルールや人間関係にストレスを感じる場合も。ケアレスミスをしたり、周囲に迷惑をかけたりしてしまうこともある。
  • 変化への適応: 新しい部署や仕事内容に慣れるのが苦手。ストレスを感じやすかったり、体調を崩してしまうことがある。また、大きな声で話しかけられたり、騒音が多かったりする職場だと集中しづらい。在宅勤務やイヤーマフなどの配慮を許可してもらえないと我慢しなくてはいけない。

2. ADHDの場合

正式名称: 注意欠陥・多動性障害(Attention Deficit Hyperactivity Disorder:ADHD)

ADHD(注意欠陥・多動性障害)は、不注意、多動性、衝動性という3つの症状が持続的に見られる発達障害です。落ち着きがなく、集中力が持続しにくいという特徴があり、思いついたことをすぐに実行してしまうなどの困難さも抱えます。具体的には、次のような特徴が見られます。

  • 不注意: 興味のないことにはすぐに注意が移り、忘れ物やミスが多い。
  • 多動性: じっとしていられず、そわそわしたり、動き回ったりする。
  • 衝動性: 考えずに行動してしまい、後先を考えずに発言したり、行動したりする。

就職を考えるうえでの困りごと

  • 集中力: 長時間集中して作業するのが苦手で、ケアレスミスをしたり、納期に間に合わなかったりしてしまうことがある。必要な持ち物を忘れる、話を聞いている途中で気が散ってしまう、長時間集中して作業するのが難しい。
  • 時間管理: 時間の感覚がつかめず、遅刻や早退が多い。
  • 衝動性: 面接で不用意な発言をしてしまう。仕事中につい余計なことを言ってしまったり、指示を無視して行動してしまうことがある。会議中に立ち歩いたりそわそわしたりしてしまう、上司の指示を待たずに勝手に行動してしまう

3. LDの場合

正式名称: 学習障害(Learning Disability:LD)

学習障害(LD)は、読む、書く、計算するなどの学習能力に困難さを抱える障害です。脳の機能が一部異なるために、知的な能力は平均並みなのに、特定の学習面に困難さを生じます。具体的には、次のような特徴が見られます。

  • 読字障害: 文字を読むのが苦手で、誤字脱字が多かったり、文章の内容を理解できなかったりする。
  • 書字障害: 文字を書くのが苦手で、字が汚かったり、書き順を間違えたりする。
  • 算数障害: 計算するのが苦手で、数字を間違えたり、計算方法を理解できなかったりする。

就職を考えるうえでの困りごと

  • 学習: 仕事に必要な知識やスキルを習得するのが苦手で、周囲に比べて時間がかかったり、理解できなかったりする。書類を読むのが苦手、指示書の内容を理解するのが難しい、数字を扱う仕事が苦手、経理や事務の仕事が難しい
  • 筆記: 議事録や報告書の作成など、筆記を伴う仕事が苦手で、ミスをしたり、時間がかかったりしてしまうことがある。履歴書や職務経歴書を書くのが苦手、メモを取るのが難しい
  • プレゼンテーション: 人前で発表するのが苦手で、声が小さく聞き取りにくかったり、内容がまとまっていなかったりする。

4. ASDとADHD併発の場合

ASDとADHDは、単独で発症することもあれば、同時に発症することもあります。ASDとADHDを併発している場合、それぞれの障害の特徴が複雑に絡み合い、より困難な状況となることがあります。

就職を考えるうえでの困りごと

  • コミュニケーションと集中力の両方が苦手
  • 集中と時間管理が特に苦手で、遅刻する・欠勤するなど面接や仕事に支障をきたす場合がある
  • ASDとADHDそれぞれの困りごとが重なり合ってより困難な状況になる場合も多い
  • 周囲の理解とサポートがより重要になるが、「甘えだ」など言われがち

5. グレーゾーンの場合

発達障害の診断基準を完全に満たさない方もいます。このような人は、発達障害グレーゾーンと呼ばれています。グレーゾーンの人は、日常生活に支障をきたすほどの困難を抱えていないことが多いですが、就職活動や仕事で困りごとを感じることもあります。

就職を考えるうえでの困りごと

  • 軽度のため、周囲の理解を得にくい
  • 発達障害と診断されていないため、必要なサポートを受けられない
  • 「甘えている」など周囲から理解されにくいため、孤立感を感じやすい
  • 自分自身が特性をきちんと理解していないため、就職活動や仕事で困難を感じる場合も多い

まとめ

発達障害には、ASD、ADHD、LDなどがあり、それぞれ異なる特徴と困りごとがあります。就職活動や実際の仕事場で困りごとを感じることもありますが、自分に合った仕事を見つけることは可能です。発達障害に関する情報収集や、周囲の理解とサポートを得ることで、困難を乗り越え、充実した仕事生活を送ることができます。

まず就職を考える際には、自分の特性を理解し、自分に合った仕事や職場を見つけましょう。そして近年では、発達障害者向けの就労支援機関や、大学・専門学校の就職支援センターなど、就職を支援する制度やサービスも充実してきています。ここを見ているあなたなら大丈夫!積極的に探して、活用してみてください。

補足

  • 発達障害は生まれつきのものであることが多いですが、原因は完全には解明されていません。
  • 発達障害の治療法はありませんが、投薬や療育、支援を受けることで、症状を改善させたり、日常生活に支障をきたさないようにしたりすることも多くあります。
  • 発達障害は、決して恥ずかしいことではありません。自分自身の特性を理解し、周囲に理解を求めていくことが大切です。