はじめに

発達障害のある方にとって、就職は人生における大きな節目の一つです。しかし、学歴によって就職状況が大きく異なるという現実があります。

このブログ記事では、発達障害者の学歴別就職状況について、大学卒から中卒まで詳しく解説します。それぞれの学歴における一般的な就職状況と、リアルな発達障害者の就職状況について分けて紹介しています。

1. 大学卒の就職状況

  • 大学卒の一般的な就職状況

近年、大学進学率の上昇に伴い、大学卒の就職状況は全体的に改善傾向にあります。2022年の厚生労働省「令和4年3月大学・短期大学卒業生の就職状況調査(速報)」によると、大学卒の就職率は98.0%と、過去最高水準を記録しています。これは、人材不足の影響も大きいでしょう。

就職先企業の規模別で見ると、中小企業への就職率が7割を超え、大企業への就職率は2割未満と、企業規模による格差も存在します。

  • 大学卒の発達障害者の就職状況

大学卒の発達障害者の就職率は、一般の学生と比べて低く、就職活動に多くの困難を経験するケースが多いです。

厚生労働省「令和元年度障害者雇用状況調査」によると、大学卒の発達障害者の就職率は約6割にとどまり、一般の大学卒の就職率と比べて20ポイント以上低くなっています。

またさらに独立行政法人 日本学生支援機構による「令和2年度(2020年度)大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査」によると、2020年の発達障害のある学生の就職率は73.5%とかなり低い状況です。

また、就職できたとしても、希望する職種に就けない、一般企業よりも給与が低い、離職率が高いといった課題も指摘されています。

2. 高校通常級卒の就職状況

  • 高卒の就職状況

高卒の就職率は、大学卒と比べて低くなりますが、近年は改善傾向にあり、2022年の厚生労働省「令和4年3月高等学校卒業生の就職状況調査(速報)」によると、就職率は約7割となっています。

就職先企業の規模別で見ると、中小企業への就職率が8割を超え、大企業への就職率は約1割にとどまっています。

  • 高卒の発達障害者の就職状況

発達障害を持つ方は、大学進学率が低いケースも多く、また就職率も同様に、一般の高卒の方と比べて低く、就職活動に多くの困難を経験するケースが多いです。

厚生労働省「令和元年度障害者雇用状況調査」によると、障害者の就職率は約4割にとどまり、一般の高校通常級卒の就職率と比べて30ポイント以上低くなっています。

また、就職できたとしても、希望する職種に就けない、一般企業よりも給与が低い、離職率が高いといった課題も指摘されています。

3.高等専門学校卒の就職状況

  • 高専卒の就職状況

2021年卒業生の就職率は98.8%と、非常に高い水準を誇っています。内訳としては、一般企業への就職が約80%、公務員が約5%、大学・大学院への進学が約10%となっています。

  • 高専卒の発達障害者の就職状況

高等専門学校卒の発達障害者の就職先としては、製造業、情報通信業、建設業などが多く、一般の高等専門学校卒業生と比べて偏りがあります。ただ、面接対策や履歴書・職務経歴書の書き方指導、企業とのマッチング支援などを提供しているところも多くあります。

4. 通信制高校卒の就職状況

  • 通信制高校卒の就職状況

通信制高校卒の就職率は、高校通常級卒と比べて低く、2022年の厚生労働省「令和4年3月高等学校卒業生の就職状況調査(速報)」によると、就職率は約6割となっています。

就職先企業の規模別で見ると、中小企業への就職率が9割を超え、大企業への就職率は約1割にとどまっています。

  • 通信制高校卒の発達障害者の就職状況

通信制高校卒の発達障害者の就職率は、一般の通信制高校卒と比べて低く、就職活動に多くの困難を経験するケースが多いです。

ただ通信制高校には、発達障害者向けの学習支援や就労支援プログラムを提供している学校も多くあります。こうしたサポートを受けながら学習・就職活動を進めることで、希望に合った道を見つけやすくなります。

5. 特別支援学校高等部卒の就職状況

  • 特別支援学校高等部卒の就職状況

特別支援学校高等部の卒業生は、おもに一般企業への就職、障害者職業施設への就職、高等専攻科・大学への進学という選択肢があります。

そして特別支援学校高等部卒の就職率は、2022年の厚生労働省「令和4年3月特別支援学校高等部卒業生の進路状況調査(速報)」によると、就職率は約6割となっています。

就職先企業の規模別で見ると、中小企業への就職率が9割を超え、大企業への就職率は約1割にとどまっています。

  • 特別支援学校高等部卒の発達障害者の就職状況

特別支援学校高等部には、発達障害者向けの就労支援プログラムを提供している学校が多くあります。こうしたプログラムでは、就職活動の訓練や、企業とのマッチング支援などを実施しています。

6.中卒の就職状況

中卒の発達障害者の就職状況は、データが十分にないため、一概には言えません。しかし、他の学歴に比べて、厳しい状況が予想されます。中卒の場合、発達障害に特化した教育や就職支援を受けられる機会がさらに限られます。

高等学校卒業程度認定試験や、高校無償化などの制度も充実してきているため、高校・大学への進学も視野に入れてみるとよいでしょう。金銭面で気になることも、親や行政、進学したい学校などにぜひ相談してみましょう。学校に通い、さまざまな人と触れることで経験値やスキルを獲得できる時間も増えますよ。

発達障害者向けの就職支援

特性がもたらすさまざまな課題を克服するために、近年では発達障害者向けの就職支援サービスが充実しています。就職支援サービスでは、面接対策や履歴書・職務経歴書の書き方指導、企業とのマッチングなど、さまざまなサポートを受けることもできます。

まとめ

今回発達障害者の就職状況は、学歴によっても変わってくるのが現状だということがわかりました。しかし、近年は発達障害への理解が深まり、支援体制も充実してきたことで、多くの発達障害の方が希望に合った職場で活躍しています。

本記事で紹介した就職支援制度や就職活動のポイントなどを参考に、あなたに合った進学・就職の道を見つけてください。